再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
「……懐かしい、ですかね」
「それは、忘れられない恋人のことを思って?」
「さぁ、どうでしょう?」

 日本の地に降り立ち、考えることはやはり央太のことばかり。
 ノアの指摘は間違いではない。だからこそ、ごまかすしかないのだ。
 素知らぬふりをしてカップを手にした私を、ノアは突然背後から抱きしめてきた。

「ちょ、ちょっと! ノア!?」

 まさか仕事場で、それも誰の目に止まるかわからない場所で抱きしめられるなんて思わなかった。
 慌てる私の耳元で、ノアは切なそうに囁いてくる。

「僕は君を日本に来させたくはなかった」
「ノア」
「ここに戻れば……嫌でも元カレを思い出すだろう?」
「いい加減にしてちょうだい」

 きつめの口調で窘めたが、ノアは未だにハグを止めようとはしない。
 それどころか、ますます真綾を抱きしめる腕に力を込める。

「ロンドンにいたときだって、真綾は元カレのことを忘れなかった」
「ノア」
「それなのに、日本に来てしまえば……真綾の心はずっとその男の物だ」
「……」

 ノアの悲痛が響き、何も言えなくなる。
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