再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 子どもにここまで心配される親も情けない。だが、確かにおっちょこちょいの真綾では、誰もが心配して当たり前なのかもしれない。
 しかし、母親になってちょっとぐらいはしっかりしてきたと思っていたのに、周りは評価してくれないようだ。悲しすぎる。
 
 自重しつつ幹太とともに入国審査を終えて荷物を受け取ったあと、タクシーに乗り込んだ。

「×××駅方面に向かってください」

 詳しい住所をドライバーに伝えると、タクシーはゆっくりと空港を出た。
 隣に座る幹太は、初めての日本に興奮気味だ。キョロキョロと車窓を眺めて目を輝かせている。
 
 新しい国、土地、生活に胸を弾ませているのだろう。
 可愛らしい横顔に、真綾の頬も緩まる。だが、真綾としては、新生活に胸を躍らせることがなかなかできないでいた。
  
 東京。それは、真綾が一生に一度の恋をした場所だ。そして、もう二度と恋をしないと誓った場所でもある。
 
 真綾には、大学二年から付き合っている男性がいた。
 永江央太(ながえおうた)。出会った当時、彼は二十七歳。大手弁護士事務所で働く、将来有望な弁護士だ。
 
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