再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 弁の立つ央太を騙すのは至難の業だろう。だが、それでもやりとげなくてはいけない。

 ギュッと手を握りしめ、それでも央太の顔をまっすぐ見つめられなくて視線をそらす。

「だんまりか……?」
「……」

 この期に及んで何を話せばいいというのか。視線を落としたまま、どうにかしてこの時間が過ぎ去ってくれることを願う。
 だが、残念ながらそういう訳にもいかないようだ。

 央太は腰を屈め、顔を近づけてくる。そのあまりの近い距離に思わず後ずさった。
 否応なしにも彼の目を見なければならない状況に追い込まれる。

「逃げるな」

 彼はそう言うと、より真綾に近づいてきて逃げようとするのを阻止してきた。

「逃げてなんて……ない」
「そうか?」
「そうよ」

 ここは強気で押し通してしまいたいところ。だが、数年前とはいえ恋人同士だったのだ。
 真綾の性格などわかっているのだろう。

 より強い眼差しで彼は見つめてくる。そして、怯む真綾により近づいてきた。

「後ろめたいことがなければ、嘘をつく必要はない」
「……」
「それなのに嘘をついた理由を話して」

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