再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 時期が来ただけ。わかっていたことだが、やはりその決断を迫られて揺らぐ自分がいた。

 自分勝手だとわかっているが、弁護士という仕事を諦めるのは辛い。
 とはいえ、あのときの永江物産の内部はガタガタになっていた。上層部が二手に分かれ、お互いを引き摺り下ろそうとしていたのだ。

 このまま放置しておけば、どうなるかわからない。だからこそ、このタイミングで央太に実家に戻ってきてほしいと父は言ったのだろう。

 後継者がいないことが発端となった内部紛争だ。それなら、社長の直系である央太が継ぐといえばある程度のいざこざは落ち着きを見せるだろう。
 父の判断は経営者として正しいのだと理解はできた。

 だが、問題はそれだけではなかった。政略結婚の話が持ち上がっているというのだ。
 これには大反対をした。弁護士を諦めて実家に入る。それは当初、約束していたことだ。
 弁護士を続けたいという気持ちはあるが、それを抑え込み家業を継ぐ。そこまでは理解できる。
 だが、自分の結婚に関しては関与されたくはなかった。

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