悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
彼は、実に凛々しい目で向こうを見ていた。
彼のこんな眼差し、仕事に励んでいる時も見たことがない。アメリアの問い掛けも、半ば聞こえていない様子だ。
「ま、いいか」
アメリアは気にしないことにした。推しに集中しているのを、邪魔しては悪い。彼女も今はミッシェルに集中したかった。
そのすぐ後ろに立っている警備兵が、見て見ぬふりも限界がきている、といった体調が悪い顔を強めた。
「『いいか』じゃない……」
「どうなっているんだこの二人は」
「しかし『見るな』とバトス近衛騎士隊長様からのご命令だ。絶対に見るなよ」
「きつい。それ、どんどんつらくなってくる……嫌でも目がいきそうになります班長殿……」
ひそひそと警備兵達が話している。
今、アメリアとクラークがいるのは庭園の端だった。敷地を囲い込む茂みの通路に並んでしゃがみ込み、植物の間から覗き込んでいる。
バレそうで、バレない。
それほどまでに、パーティーが盛り上がっているせいだ。
警備も普段より厳重なので、まさか覗き見の見物客がいようとは誰も思っていない。
「ああぁぁっ、ミッシェル様が尊い!」
飾り付けがされた庭園の広場で、ミッシェルはマティウスと寄り添い客人と対話に励んでいた。
ブラウンの髪を揺らした、優しい美貌の王太子だ。
女神のごとく微笑みを浮かべた彼女と、大変似合っている。