9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
違和感が胸の中に渦巻いたが、これ以上の黙秘は無駄だと悟り、とりあえず答えることにする。

「はい、そうです。特別に思っています。私はあなたのそばにいるべきではありません」

――ガッ!

次の瞬間、視界が白くなった。

頬に衝撃が走り、口の中に血の味が広がる。

目の前には、握った拳をわなわなと震えさせている、真っ赤な顔のエヴァンがいた。

彼に殴られたのだと気づくのに、時間はかからなかった。

取り巻きたちがざわつく声がした。

「あら、大変」というマーガレットの面白がるような声もする。

エヴァンが、我に返ったように自分の握った拳を眺める。

そして頬を腫らしているセシリアに視線をやり、一瞬、気後れするような表情を見せた。

セシリアは殴られた頬にそっと触れた。

遅れて、ズキズキとした痛みが頬から走る。

(殴られたのなんて、初めて)
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