9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
黒衣の男に続くように、謁見の間にバタバタと男たちが駆け込む。

ざっと七人といったところか。

男の着ている騎士服によく似た衣服を身につけ、揃って帯剣していた。

見ただけで、手練れの騎士の軍団だということが分かる。

おそらく、彼の護衛だろう。

「まさか、皇太子デズモンドなのか……?」

最高司祭が、臆したようにつぶやいた。

その声に、皆が息を止める。

噂は幾度か耳にしたことがあっても、その姿を見た者はほとんどいないからだ。

年長者の彼だけが唯一、知っていたようだ。

(デズモンドってつまり……皇帝デズモンドってこと?)

セシリアは、ますます身体を震わせた。

八度の人生、姿はおろか肖像画すら見たことはなくとも、何度もその名に怯えてきた。

皇帝でありながら、帝国一の剛腕で、おまけに強力な魔法さえ操るといわれる男。

冷酷非道で、逆らう女子供にも容赦のない、悪名高き皇帝。
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