9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
デズモンドの即位はまだ先だから、たしかにこの時点ではまだ皇太子だ。

(自らエンヤード王国に乗り込んでくるって、どういうことなの?)

ループ人生きっての異例の事態に、セシリアは足を竦ませていた。

動揺のあまり、殴られた頬の痛みなどもはや感じない。

「皇太子様自らがなんの前触れもなくこの城に訪れになるとは、驚きました。どういった御用件でしょう?」

重鎮のひとりが、前に進み出た。

しかしデズモンドは、彼には目もくれずに、まっすぐにセシリアの方に歩んでくる。

自分を一心に見つめる空色の瞳に、セシリアはふと奇妙な既視感を覚える。

だが、それどころではなかった。

足を止めたデズモンドがセシリアの肩を抱き、エヴァンから引きはがしたからだ。

「その頬はどうした?」

頭上から発せられた耳心地のよい声に、セシリアは目を剥いた。

どうしようもなく、聞き覚えがあったからだ。
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