9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
エンヤード王国は、オルバンス帝国に比べると、国力・軍事力・領土どれをとっても劣る。

一国の王太子として、本来であれば丁重にデズモンドを出迎えねばならないところだが、そんな余裕はないらしい。

「触れずにいられるか。情を交わした相手だ」

エヴァンの剣幕に怯む様子もなく、デズモンドはセシリアの肩を抱く手に力を込めた。

昨夜のことを思い出し、セシリアの顔がみるみる朱に染まっていく。

その様子を目の当たりにしたエヴァンの表情が、苛烈に歪んでいった。

カッと両目が見開かれ、全身が総毛立つ。

「貴様……、まさか、貴様がセシリアを……!」

怒り露に、腰に差した剣の柄に手をかけるエヴァン。

だが、そのとき。

「待て!」

雷に似た太く威厳のある声が、謁見の間いっぱいに響き渡った。

構えの姿勢に入ろうとしていたエヴァンが、剣の柄に手をかけたまま、ぴたりと静止する。
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