9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
その場にいるすべての人間が、声のした方向に顔を向けた。

扉の前に、朱色のローブをまとった壮年の男がいる。白髪交じりの金色の髪に、口髭。

ダリス教の象徴であるベラスカの葉の紋様が緻密に彫り込まれた冠をかぶっていた。

エヴァンの父であるエンヤード王だ。

謁見の間に控えていた家臣たちが、一斉に彼に向かって敬服の礼をする。

エンヤード王はツカツカと中に歩むと、もう一度エヴァンに怒声を放った。

「無礼はどちらだ! かのオルバンス帝国の皇太子の来訪であるぞ! エヴァン、姿勢を正せ!」

だがエヴァンは、国王の指示に従うことなく、毅然と立ち向かう。

「この国の聖女が野蛮な国の男に凌辱されたんです! これが、怒らずにいられましょうか!」

「黙れと言っておる!」

「く……っ!」

今度は目力とともに厳しい叱責を受けて、エヴァンはついに口を閉ざした。

悔しそうに拳を握りながら、耐えるようにうつむく。
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