9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
「そういえば、エンヤード王国には聖女様がいらっしゃるのですよね。ダリス教は聖女信仰に根差した、とても神秘的な国だと聞きました。聖女様のご加護で、小国ながら、国は平和に保たれているのだとか。お会いしたことはありますか?」

「ええ、まあ……」

エリーの口ぶりから察するに、セシリアが元聖女だということは知られていないようだ。

曖昧に言葉を濁すセシリアは差し置いて、陽気なエリーは、ペラペラと先を続ける。

「この国にも、ユルスツク教と呼ばれる国教があるんですよ。けれど、エンヤード王国ほど信心深くはありません。一応神の使徒である聖人も存在するんですけどね、エンヤード王国の聖女のように表立って活躍することはなく、どこの誰かも分からないらしいですよ。右手首にメビウスの痣を持つと伝わっているのですが、本当かどうかも怪しいものです。ダリス教の聖女の真似をして考えられた作り話だろうって、みんな言ってますよ」

そうこうしているうちに身支度は終わったらしく、セシリアは姿見の前に誘導された。

そして、驚きのあまり目を見開く。

自分の姿が、あまりにも変わっていたからだ。

「これが、私……?」

胡桃色の髪は両サイドを編みこまれ、他は腰まで落とされていた。

白い花のモチーフの髪飾りが、そこかしこに散りばめられている。
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