9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
湯浴みを済ませたのか、彼はずっと着ていた騎士服から、白のシャツに黒のタイトな下衣というラフな格好に着替えていた。

少し濡れている黒髪が妙に艶やかで色っぽい。

セシリアは慌ててソファーから立ち上がると、彼に向かって丁重に頭を下げる。

彼への警戒心は解けていないが、こうして衣食住を与えられている限り、最低限の礼は尽くしたい。

「はい、お陰様で、心地よく過ごさせていただいています。こんなに素敵な部屋にドレスまでご用意くださり、本当にありがとうございました」

そんなセシリアを、デズモンドは上から下までじっくりと眺めていた。

それから考え込むように、口元に手をやり下を向く。

「あの、どうかされましたか?」

「……いや、何でもない。それは我が国の伝統衣装だな? よく似合っている」

そう言って顔を上げたデズモンドは、もとの落ち着いた雰囲気の彼に戻っていた。

「ありがとうございます……」
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