9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
褒められ慣れていないセシリアは、思わず頬を紅潮させた。

デズモンドに褒められると、他の人に称賛されたときよりも呼吸がしづらくなるのはなぜだろう。

エンヤード王国からオルバンス帝国までの移動中、セシリアはあれほど彼から距離を取ろうとしていたのに、彼の方は不機嫌になることも邪険に扱うこともなかった。

今もこうして、忙しい合間を縫って様子を見に来てくれている。

そんな紳士的な彼の態度にほだされそうになっていることに気づいて、セシリアは心の中で自身を戒めた。

(それでも彼は、あの悪皇帝デズモンドなのよ。今は皇太子だから、即位後よりも幾分か穏やかなのかもしれない。騙されちゃいけないわ)

「あの……。ひとつ、知っておいていただきたいことがございまして」

緩んだ頬を引き締め、真面目な顔になる。

「なんだ、言ってみろ」

「私、魔法が使えないのです」
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