9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
「ジゼル・サイクフリート様はサイクフリート侯爵家のご令嬢です。年は、たしか二十二歳だったはず。国内きっての有力者、あの大魔導士エンリケを父に持つ、才色兼備な御方なのですよ」

ジゼルの容姿を思い浮かべているのか、エリーがうっとりと夢見るような目つきになった。

「ジゼル様も、後宮入りされるの? 先ほど、そんな話を耳にしたわ」

するとエリーが、ややバツの悪そうな顔を見せる。

「はい。ジゼル様はデズモンド様とは幼馴染で、お兄様のベンジャミン様はデズモンド様の側近をされているほどの仲です。いずれ正妃になられるともっぱらの噂ですよ。ジゼル様は大魔導士エンリケ譲りの魔力をお持ちで、国内ではエンリケ様を除いて魔法で彼女の右に出る者はいないのだとか。ご本人同士も仲がよく、デズモンド様が頑なに妃を迎えようとなさらないのは、今は魔導士としての業務がお忙しいジゼル様が後宮入りする日をお待ちになられているからだとお伺いしました」

「なるほど。正妃候補は、すでにいたのね」

まさか異国からきたしがない子爵令嬢に過ぎない自分が正妃候補だとは思っていなかったから、別段驚かなかった。

正妃候補がすでにいて、暇つぶしの道楽としてセシリアを後宮入りさせたとなれば、納得だ。

(ジゼル様って、どんなお方なのかしら)
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