9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
(彼女を怯えさせたくはない。もう少し、時間を置こう)

そう自制しつつ、日々を過ごしている。

「政務中にあなたが考え事とは、珍しいですね」

背後から声が聞こえ、デズモンドは我に返る。

視線を向けると、漆黒のローブを身に纏った男が立っていた。

いたずらっ子のような眼差しを浮かべながら、デズモンドを見つめている。

フードから覗く銀色の髪に、同色の瞳。

色白で、面立ちはどちらかというと中世的。

首からは、漆黒の魔石のペンダントがぶら下がっていた。

ベンジャミン・サイクフリート。

オルバンス帝国最強の魔導士にして侯爵でもあるエンリケ・サイクフリートの嫡男であり、デズモンドの幼馴染かつ側近でもある男だ。

ベンジャミンは気配を消すのが巧みで、瞬間移動でもしてきたのかと疑うくらい、突然現れることがある。

もっとも、彼がそんな芸当をこなせないことを、デズモンドは百も承知だ。
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