9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
エンヤード城でのひと悶着の様子は、デズモンドが懐に忍ばせている魔石を通して、ベンジャミンにも伝わっている。

「それなら、誰でもよかったということか」

デズモンドの声が低くくぐもる。

「そういうわけではないと思いますよ。セシリア様にも、選ぶ条件はあったでしょう。あなたはその条件をクリアしたわけですから、好意を抱かれているととらえていいかと。それにしても女性のことで悩むあなたのお姿は、やはり新鮮ですね」

そこでベンジャミンが、今までのヘラヘラとした雰囲気から一転して、しごく真面目な顔つきになった。

「とにかく、あなたが女性嫌いを克服してくれて本当によかったです」

切なげな声に吸い寄せられるように、デズモンドはベンジャミンの顔を見る。

彼らしくない年長者じみた笑みを浮かべるベンジャミンは、デズモンドが女を忌み嫌うようになった理由を分かっているのだろう。

話題にしたことはないが、幼い頃からずっと一緒にいるので、なんとなく感じている。

ベンジャミンの意味深な微笑みに導かれるように、デズモンドは過ぎ去った過去に思いを巡らせた。
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