9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
ろくに知識を蓄えることもせず、身体を鍛えるわけでもなく、権力のある男に気に入られるためだけに日々を費やす女たちの生きざまは、不快でしかなかった。

女同士で争い、いがみ合うのも、見ていられない。

甘ったるい香水の匂いをまき散らしながらベタベタと身体を擦り寄せられるたびに、不快感から嘔吐する日々。

そんなときデズモンドの介抱をしてくれたのは、決まってベンジャミンだった。

大魔導士の子供として生まれながら、火起こし魔法しか使えないベンジャミンは、子供の頃から魔導士仲間に蔑まれていた。

妹のジゼルが物心つく前から魔導士として優秀だったせいで、彼の不出来さがより際立ったというのもある。

デズモンドはその頃、一見能天気で何も考えていないように見える落第魔導士が、人一倍人の感情に敏感であることを知った。

そして、高位貴族にしては珍しく、素朴な優しさを隠し持っていることも。

だから側近として、ベンジャミンをそばに置くことを望んだのだ。
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