9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
「ですが――」

ベンジャミンが、不思議そうに顔を傾げる。

「それほどセシリア様のことを気に入られているのに、塩対応すぎやしませんか? 御渡りがまったくないと、後宮ではもっぱらの評判ですよ。そのことが原因で、妃たちの嘲笑の対象になっているとか」

デズモンドはペンを握り直すと、中断していた書類仕事を再開する。

「セシリアは俺を怖がっている、今はまだ不用意に近づかない方がいい。彼女を怖がらせたくはない」

「なるほど。それほど大事に思われているってことですね。でも不用意に近づかないって、いつまでですか?」

「それは……分からない」

「そうか、そうですよね。あなたは色恋に関しては、ドのつく素人ですもんね。セシリア様を思いやる御心は称賛したいですが、いつまでもこの状態だと、安心してもらえるどころか眼中にないと思われて、完全に心が離れてしまいますよ」

ベンジャミンの返答に、ぐうの音も出ない。

それは、デズモンドがもっとも懸念していたことだったからだ。

怖がらせずに彼女と親しくなる方法が、まったく分からないのである。

「しょうがないですね。ここは年上らしく、ひとつ助言をいたしましょう」

渋顔でベンジャミンを見返したデズモンドに、落第魔導士はにやついた笑みを向けた。

「これも調べたことなのですが、セシリア様は何でも、エンヤード城では“役立たずの聖女”として疎まれていたらしいですよ」

「役立たずだと? セシリアがか?」
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