9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
立ち尽くすセシリアを見つめる彼の口元に、微かな笑みが浮かぶ。

いつもの大人びた笑みとは違う、どこか少年じみた、澄んだ笑い方だった。

「ああ、もちろんだ」

そう言い残すと、デズモンドは再びセシリアに背を向け、颯爽と部屋から出て行った。

パタンとドアが閉まると、セシリアは力尽きたようにストンとソファーに腰を下ろす。

いまだに、顔が熱い。

自分が今どんな顔をしているのか分からないが、彼に見られていたと思うとたまらなく恥ずかしい。

しばらくぼうっと熱の余韻を感じていたセシリアだったが、徐々に正気を取り戻していく。

そして、今度はサアッと顔を青くした。

「私、デズモンド様にどうしてあんなことを言ったのかしら……」

宿敵のはずの彼に、また会いたい、というようなことを伝えたように思う。

エヴァンを殺した相手に心を許すなど、あってはならないことだ。
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