9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
セシリアは、これまでのループ人生の記憶を手繰り寄せる。

皇帝デズモンドの悪評はさんざん耳にしてきた。

エヴァンも血眼になって彼を罵り、討伐しようと躍起になっていた。

だがセシリアは、八度目の人生まで、一度もデズモンドに会ったことはない。

デズモンドに関することは、すべて伝聞か噂で耳にした内容である。

そして、彼が暗黒魔法の使い手という噂は嘘だった。

(でも、今は直にデズモンド様を見て声を聞いているわ)

彼は余裕に満ちた大人の男で、懐が広く、そして優しい。

子供じみたところがあって、いつも不機嫌で冷たかったエヴァンとは、対極の存在だ。

そして天涯孤独のセシリアに、寄り添おうとしてくれている。

――『これまでのことはすべて忘れて、君はこの国で、君らしく生きるといい』

「デズモンド様は、とてもいい御方だわ」

素直にそう認めたとたん、心がフッと軽くなる。
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