9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
それから口を開きかけて、言い淀むようにすぐに閉じた。

「助言をしたいところですが、こればかりは僕がしゃしゃり出るところではありませんね。デズモンド様の男気を信じましょう」

そうつぶやくと、ベンジャミンは、またニコッと微笑んだ。

「では、そろそろ失礼します。使えないが、これでも魔導士の端くれです。何か魔法関係で困ったことがありましたら、いつでも僕を頼ってくださいね」

「はい。ありがとうございます、ベンジャミン様」

書庫の扉へと近づく黒のローブの背中を、セシリアは本を手に見送った。

(ベンジャミン様。側近らしくも魔導士らしくもない、不思議な人)

デズモンドよりも年上と聞いたが、まるで十二、三歳の少年とでも話しているような気分だった。

擦れてなくて、侯爵家の嫡男のはずなのに貴族らしくもない。

(でも、あの方となら仲良くなれそうだわ)

これまでのループ人生、味方など皆無だったが、またひとり親しい人間が増えたようで、セシリアはうれしくなったのだった。
< 200 / 348 >

この作品をシェア

pagetop