9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
エンヤード王国にいた頃も、ずっとそうだった。

困っている人を見て自分にできることはないかと声をかけても、嫌がられたり、無視されたりし続けてきた。

だが。

――『これまでのことはすべて忘れて、君はこの国で、君らしく生きるといい』

デズモンドの言葉を思い出し、セシリアは勇気を奮い起こす。

ドレスのスカートをぎゅっと握り締めると、ベンチに座る妃に近づいた。

「ため息ばかりつかれていますが、どうかされましたか?」

彼女は手鏡から顔を上げると、セシリアを見て、恥じらうように視線を泳がせた。

「あら、嫌だ。私、ため息をついていました?」

女性は、セシリアを見ても別段嫌がる風ではなかった。

困ったように笑うと、またため息をつく。

深刻に悩んでいて、セシリアの立場など意に介していないといった雰囲気だ。
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