9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
「疫病というものは、ときに戦争よりも恐ろしいものだからな。大したことはないと高をくくっていた疫病が、死を招く大病に変化した例は、歴史上何度か見受けられる。早めに一掃しておいた方がいい」

あまりにも高額な予算が割り当てられていたので、セシリアが驚いていると、デズモンドは当然のようにそう答えてくれた。

(デズモンド様のおっしゃる通りよ。まだ長期風邪と侮られているこの時点でこんなことをおっしゃられるなんて、やはりこの方には先見の明があるのね)

セシリアは改めて彼の聡明さと決断力の潔さを知って、惚れ惚れした。

そして今では、エンヤード王国で過ごしていた頃に耳にした、彼の悪い噂を信じる気持ちはいっさいなくなっていた。

(エヴァン様は明確な理由もなく何度もオルバンス帝国に戦争を仕掛けた。そんなの、非道な侵略以外の何でもないわ。だけど、悪政を敷いている皇帝を討伐しに行くと民に思い込ませれば、批判意見が亡くなる。だから、デズモンド様がどんな方かも知らずに、わざと悪い評判を流されたのかもしれない)

もう二度とエヴァンに会うことのないセシリアにとっては、たしかめようがない。

だがセシリアは、本当のデズモンドを自分の目で見て知った今、その推測に確信めいたものを感じていた。
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