9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
城に街の薬師たちを集めて、新薬の調合方法を指導する講習会を開くその日。

セシリアが研究所で王宮薬師たちと準備を進めていると、突如扉が開いた。

入って来たのは、銀色に輝くサラサラの髪を背中に流した、見たこともないほど美しい人だった。

高級そうな黒地のドレスが、美しすぎて冷たさすら感じる彼女の雰囲気によく合っている。

そのあまりにも神々しい美しさに、セシリアは目を瞠った。

「あの方はどなたですか?」

一緒に作業をしていた若い女薬師も、憧憬の目で彼女を眺めている。

「魔導士エンリケのご息女、ジゼル様ですよ。本日市井の薬師たちに配布する薬草を、氷魔法で冷凍してくれないかとお願いしたのです。ジゼル様の氷魔法は持続力が高く、薬草を長期保存したいときは、ときどきこうして来ていただいているのです」

彼女の言葉通り、ジゼルは研究所の薬師たちとは顔見知りのようで、笑顔で出迎えられていた。

「それで、薬草はどこなの?」

問いかけるジゼルに、案内役の薬師が、手もみをしながら答えている。

「こちらでございます」

「まあ、今日は大量ね。腕が鳴るわ」

「ジゼル様の氷魔法のおかげで、本当に助かっております。どうぞお願いいたします」

ジゼルが、あらかじめ木箱に用意されていた深緑色の薬草に手をかざす。
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