9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
その瞬間、セシリアはエメラルドグリーンの瞳を大きく見開いた。

これほどまっすぐな優しさを向けられたのは、生まれて初めてだったからだ。

『あなたは、ダリス神が遣わした聖人なのですか?』

本気でそう思った。

これほど美しく心優しい人間がこの世にいるなど信じがたい。

世の中には、いじわるな人しかいないと思っていたから……。

すると少年はさもおかしそうに、ハハハッと笑い声を響かせる。

『ダリス神は聖人を遣わさないよ。遣わすのは聖女だ。聖人は異教の使者だね』

それから、セシリアの頭にポンと手を置いた。

『君はかわいいうえに面白い女の子だ。だから自信を持って』

『はい……。ありがとうございます』

少年はセシリアの頭をひと撫ですると、その場から立ち去った。

胸が無性にドキドキして、セシリアは少年が消えていった方向を見つめたまま、しばらくの間動けないでいた。
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