9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
「世界は、こんなにも広かったのですね……」

セシリアは、人より余分に人生経験を重ねてきた。

だがどれも、他人に蔑ろにされ、エヴァンに愛されたいとばかり考えながら、奮闘するだけの人生だった。

目の前の景色を見ていると、自分がいかに閉塞的な人生を繰り返していたのかを思い知らされる。

この世にはきっと、まだセシリアの知らない世界がたくさんあるのだ。

「そうだ。そして、この広い世界にある家々のひとつひとつに、大切な民が住んでいる。もしも君があの長期風邪の特効薬を世に広めてくれなかったら、彼らはこうして、平和な夕暮れを迎えていなかっただろう」

その声にハッとして、セシリアは、自分を抱きしめるようにして背後に立っているデズモンドを見上げた。

景色ではなく、ひたむきにセシリアだけを見つめている碧空の瞳。
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