9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
(もしかしてデズモンド様は、疫病でたくさんの死者が出る未来を知っているの? いいえ、そんなわけがないわ。賢い御方だから、長期風邪を放置することによる弊害を、自らお気づきになったのね)

今までの八度の人生で、オルバンス帝国で、デズモンドがどのように生きてきたかは知らない。

だがきっと、疫病を鎮めるために、全力で奔走していたのだろう。

彼はそういう、奢ったところのない、民のことを第一に考えることのできる支配者だ。

「君がいてくれてよかった」

目を逸らさぬまま囁かれたデズモンドの言葉が、セシリアの胸を打つ。

――『あんな使えない女、いなくなればいいのに』
――『この役立たずの偽聖女が、早くどこかに消えてしまえ!』

今までの人生で浴びた辛辣な言葉がよみがえり、セシリアは心を震わせる。

(この方は、私を必要としてくれている――)

そう自覚したとたん目に涙があふれ、静かに頬を伝った。
< 256 / 348 >

この作品をシェア

pagetop