9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
出会った頃はたしかに淡い恋心だった。

だが次第に、聖女として彼を支えなくては、責務をまっとうせねばという気持ち以外見えなくなってしまった。

セシリアはずっと、それを恋心と勘違いしていたのだ。

(私たちは、お互いがお互いを想っていなかったのね)

エヴァンを繰り返し死に導いたのは、彼がセシリアを愛さなかったからではなく、セシリアが本当の意味でエヴァンを愛していなかったからでもあったのだろう。

あふれんばかりの想いが心を支配して、セシリアは潤んだ瞳でデズモンドを見つめることしかできなくなっていた。

するとやにわに背中に手を回され、目の前が陰る。

すぐに、柔らかな感触が唇に落ちてきた。

デズモンドからの久々のキスは、泣きたいほどにうれしくて、すぐに離れてしまったそれを追い求めるように目で追ってしまう。
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