9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
彼が、赤い顔のまま、困ったように笑った。

男の色気に満ちたその笑顔に刺激され、セシリアは、初めて会った夜の出来事を鮮明に思い出す。


……――身体中を這いずり回る、濡れた、柔らかな唇。

自分のものとは思えない甘い声を漏らすと、彼は喜ぶように色気たっぷりの笑顔を見せて、何度もセシリアの唇を塞いだ。

――『気持ちいいか?』

彼の手つきは、温かくて優しかった。

初めての快楽に溺れながら、彼の濡れた黒髪に手を這わせたのを覚えている。

――『痛くないか?』

行きずりの、一夜限りの女に、この人はどうしてこんなにも優しいのだろう。

そのことをうれしく思うと同時に戸惑いながら、セシリアは彼に身を任せ、揺さぶられた。

揺れる視界に映る、鍛え抜かれた上半身。

ひたすら自分を見つめる、情欲に満ちた水色の瞳――……
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