9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
「私、あの方が――――」

胸が、ドクドクと不穏な音を刻んでいる。

デズモンドの一挙一動に心ときめかせているときの鼓動とはまるで違う、暗い響きだ。

呼吸が苦しくなり、次第に寒気に襲われる。

(あれ? なんだか様子がおかしいわ)

デズモンドの本命はジゼルだという噂を思い出し、彼を受け入れることに躊躇したはずが、それどころではない重だるい感覚が急激に肩にのしかかっていた。

次第に息が苦しくなり、霧が立ち込めたかのように視界が白んでいく。

「セシリア? おい、セシリア!」

デズモンドの声と、肩を揺さぶられる感覚を最後に、セシリアの意識はプツリと途切れた。
< 262 / 348 >

この作品をシェア

pagetop