9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
そうだ。

セシリアはもう、エヴァンに愛されることにだけ重きを置いているような女ではないのだ。

デズモンドが、セシリアにあるべき生き方を教えてくれた。

セシリアには、自分で物事の良し悪しを判断し、自分のために生きる力がある。

「私のときも、そうおっしゃっていたではないですか」

セシリアが静かにそう反論すると、とたんにエヴァンが泣きそうな顔になる。

「違うんだ……っ! それには深い訳があって……っ!」

腕をつかもうとしたエヴァンの手を、セシリアはスルリと身を交わして避けた。

「エヴァン殿下は、愛情というものをはき違えておられます。私がご自分のもとからいなくなったから、惜しくなったのでしょう? それでは、おもちゃを取り上げられてダダをこねる子供と一緒ではないですか。愛情というものは、そのような身勝手なものではなく、もっと心の奥深くで相手を思いやれる尊い感情だと思います」
< 298 / 348 >

この作品をシェア

pagetop