9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
ハラハラしながらその様子を眺めていたセシリアの胸に、ふと疑念がよぎる。

(デズモンド様は、数々の戦地で功績を残した御方よ。エヴァン様だって、もちろんご存じのはず。それなのに、どうしてこんな無謀な闘いに自ら挑まれたのかしら)

気づけば攻撃するのはデズモンドばかりで、エヴァンは防衛の一途になっていた。

明らかに劣勢のはずなのに、その顔にはなぜか焦燥を感じない。

(今までもそうだった。エヴァン様はオルバンス帝国に戦いを挑んだ際、いつも自らデズモンド様に一騎打ちを挑もうとしたと聞いたわ。結局それが叶ったのは一回だけで、殺されてしまったけど、エヴァン様には何か秘策があったのかもしれない。勝てない戦いを勝てると勘違いするような、愚かな人ではないもの)

トクトクと胸を打つ鼓動が、速度を速める。

降って湧いた疑念が、確信に変わっていった。

(秘策って何……? 考えられるとしたら……)
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