9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
「いや……っ! いやよ……っ! お願い、生き返って……!」

セシリアは心の限り泣き叫ぶと、愛する人の身体を無我夢中で抱きしめる。

(私の気持ちを伝える前に、亡くなってしまわれるなんて……)

こんなにつらいことが、この世に存在するのかと、セシリアは絶望に打ちひしがれた。

ただただ、死んでしまいたいと思いながらむせび泣く。

だがふと泣くのをやめて、息を呑んだ。

(あったわ……。デズモンド様をよみがえらせる方法が)

――最後の時空魔法を使って、デズモンドが死ぬ前に戻るのだ。

だがそれは、セシリアの死と引き換えになる。

デズモンドがよみがえる未来に、セシリアはいない。

(それでもいい)

セシリアの決断は早かった。

すっくと立ちあがったセシリアが顔を向けたのは、真っ白な顔でデズモンドの遺体を見つめているベンジャミンだった。

突然の主の死を、受け入れられないのだろう。
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