エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
「覚えてるよ。私が中学生の頃にボランティアの集まりで会ったんだよね。でも一哉さんは忘れてるのかと思ってた」

彼の方も澄香が覚えているとは思っていなかったようで、「覚えていたのか」としみじみした様子で呟いた。

「あれは俺にとって印象的な出会いだった」

澄夏は目を見開いた。

「うそ……だって、そんなこと一度も。お見合いの席でも初対面の人の挨拶だったし。だから覚えてないんだろうなって思ったんだけど」

「俺も澄夏の様子を見て覚えてないだろうなと思ったんだ。それにあの時はお義父さんも同席していたから、ボランティア活動のとき一緒に休憩してなんて言い出し辛いだろ?」

「あ……それはそうかも」

(お互い言い出さなかっただけで、忘れていなかったんだ)

「澄夏のことはよく覚えてる」

「あまり良いイメージはなかったでしょ? あのとき、私生意気なことばかり言ったし、だらしないところも見せたし」

「そうか? 俺は励まされたよ。あの頃は進路に悩んでいたんだけど、澄夏の言葉で吹っ切れた」

一体どうしてそんな話になっているのだろう。澄夏は大したことは言っていないはずだ。
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