エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
自宅に来るのはそれくらいしか考えられない。

しかし夫は真咲が澄香を嘘で騙したのを知っているから、彼女に使いを頼んだりするとは思えない。

困惑する澄夏に、画面の向こうの真咲は微笑みを浮かべた。

「ご無沙汰しております。経済産業省の南雲です」

よく通る声で、気まずさなど微塵も感じない堂々とした口ぶり。

澄夏は躊躇いながら口を開く。

「お久しぶりです。夫はもう家を出ているのですが」
「ええ、承知しています。今日は奥様に話があり伺いました」
「私に?」

澄夏は眉をひそめた。

(話ってなんなの?)

悪い予感しかしない上に、真咲と二人きりで話すのは苦痛でしかない。

「あの、これから外出の予定があり時間がありません。申し訳ありませんが、御用件は夫に伝えていただけますか」

異動を控えて多忙な一哉を煩わせたくないが、この場合は仕方ないだろう。

「突然押しかけたのはこちらです。お時間は取らせません」

他人の頼みでも断るのが苦手な澄夏にしてははっきりした拒否のつもりだった。それなのに、真咲は引きさがるつもりはないようだ。押しの強さが言葉に滲み出ている。
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