エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
父は毎日見舞いに行くが、十分程度で帰ってしまうそうだ。母の為にももっと寄り添って欲しいと常々思っていたから望みが叶ったのだけれど、それだけ病状がよくないのかと思うと心配だった。

「お父さんは家で待つように言ってたけど、病院に行った方がいいのかな」

ソファに座りながら独り言のように呟く。

「旦那様から、澄夏さんが出かけようとしたら引き留めておくようにと言われています」
「そうなの? 行き違いにならないようにかな……」

和子はてきぱきと冷たい緑茶を用意して澄夏の前に置いてくれた。

「お父さんは相変わらず?」

澄夏が尋ねると、和子は困ったように眉を下げてから、オットマンに腰を下ろした。

「ええ。外出も奥様の病院くらいで……最近は来客も少なくなってきているので、私以外と話さない日もあると思います」
「そう……困ったわね」

母が居てはっぱをかけてくれたら、父も動くかもしれないのに、その父の態度が母を病ませている悪循環に陥ったまま変化がない。
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