エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
「母さんがあれほど取り乱すのは初めて見た。驚いてお前に電話をしてしまった。一哉君の世話もあるのにすまない」

父は自嘲するように言った。

「大丈夫。前も言ったと思うけど一哉さんはなんでもひとりで出来る人なの。私が一日二日家を出たところで、問題ないから」

「そうか」

「うん。それよりもお母さんがどうして激高したのか、理由は聞いた?」

澄夏がそう言うと、父の表情が明らかに暗くなった。

「聞いたが理解しがたい内容だったな」

父は戸惑っているように見えた。その姿を見ていたらいつか母が話していたことを思い出した。

『なにがつらいって、お父さんが落選してすっかり落ち込んでいるのに、助けになってあげられないところね』

(もしかしたら直接お父さんに話したのかも)

日頃はあまり自分の気持ちを表に出さない母だが、父との会話でヒートアップして口論になったのかもしれない。

「母さんは今回の件で参ってるからな。この先の生活の心配はいらないと言ってるんだが、安心出来ないらしい」

「……お父さんはお母さんにいつもそんな言い方をしているの?」

「そんな言い方?」

「心配はいらないとか」

「なにかおかしいか?」
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