エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない～離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます～

「ああ。しばらくは立て込んでいる。六月半ばになったらある程度落ち着くはずだ」

「やっぱり通常国会が閉会するまでは忙しいんだね。ごめんなさい、こんな時期に家を空けてばかりで」

多忙な夫をフォロー出来ない後ろめたさがこみ上げて、澄香は肩を落とす。

「気にするな。俺のことは放っておいてくれていいから」
「……うん」

一哉は気を遣って発言したのかもしれない。だけど必要とされていない虚しさで澄夏は密かに傷ついていた。

こんなとき離婚の文字が頭を過る。

（お父さんが落選したことで自虐的になってるのもあるけど）

最近の澄香は迷ってばかりだ。

「どうした？」

澄夏が黙ったからか、一哉が心配そうに眉をひそめた。

「ううん、何でもないよ」

澄香はマイナスな考えを頭から消して微笑んだ。

激しく求められたことはなくても、愛の形はいろいろあるのだし、元々一哉が恋愛に対してそこまで熱くならない性格なのかもしれない。

今は距離を感じているけれど、いつかはお互いを必要とする関係になれるのかもしれないし。

「あ、もうこんな時間か」