エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
一哉がリビングの時計をちらりと見てから、お粥の残りを蓮華で掬い口に運んだぶ。

それから手を合わせて「ごちそうさまでした」と言い席を立った。


一哉が家を出た後、ひと通りの家事を済ませた。

部屋が綺麗に整ったのを確認してからちらりと時計を見ると、いつの間にか九時を過ぎている。澄夏はソファから立ち上がり、外出の支度を始めた。

今日は駅前のスーパーに行き食材を買いに行く予定だ。帰宅後は、母に見舞いの品を送ってくれた知人へのお礼品を手配しなくてはならない。

母が倒れてからは毎日用事が多く一日家でのんびり過ごせる日は少ない。

殆どが家族関係の用件であるものの、決して適当には出来ないから神経を使う。

外出の支度をしていると、自宅の電話が鳴った。

携帯ではなく家の方にかけて来る人は限られている。

どこかから番号を入手しているセールスか、または……。

思い浮かんだ名前のせいで少し緊張しながら受話器を手に取る。

「はい。須和でございます」

《澄夏さん、私だけど》

澄夏が名乗ると直ぐに、女性にしては低く張りのある声が聞こえてくる。

予想していた通り一哉の母。澄夏にとっての義母からだ。
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