エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
「お義母さま、お久しぶりです」

義母からの電話はたしか一カ月ぶりだ。それ程頻繁に連絡してくる訳ではないので楽だが、一度話し始めると長話になる。

今日もすぐには終わらないだろうと、澄夏は受話器を手にソファーに腰を下ろした。

《本当に久しぶりね。岩倉先生と奥様の具合はどうなの? 心配していたのよ?》

「不義理をして申し訳ありません。父も母も相変わらずで、落ち着くまでまだしばらくかかりそうです」

《そうなの……心配ね》

受話器の向こうから重い溜息が聞こえた。なぜか嫌な予感が過り、澄夏は身構えるように姿勢を正す。

「ご心配をおかけてして申し訳ありません」

《あら、そんな風にかしこまらないで、澄夏さんは今となっては私の娘なんだからもっと頼っていいのよ?》

「ありがとうございます」

地元の大手不動産会社の社長夫人という立場の義母は顔が広い。

日ごろから相談事を持ち掛けられる機会が多々あり、てきぱきと対応している。

頼りになるところは一哉に似ているなと思っていた。

だけど実家に関してはあまり相談出来ない。澄香の父は地元の人に内情を話すのを嫌がるからだ。
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