エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
《澄夏さんは優しいのね。でもね、母親としては息子には幸せになってほしくてね。仕事ばかりの人生じゃ味気ない。気付けば独りぼっちなんてことにならないか心配していたのよ》

「一哉さんが独りになるなんてないと思いますけど。高校生の頃から皆の中心人物でしたし」

《そうでもないの。あの子あんな図体で態度も大きいけど、意外と奥手なところがあるのよ。好きな女性が出来てもアプロ―チ出来ないんじゃないかって心配だったの。でも澄夏さんと出会い、幸せな家庭を築いているほっとしているわ。ありがとうね澄夏さん》

「奥手……ですか?」

一哉に対してそんな感想を持った覚えはない。

見合い後の初めてのデートも彼は慣れた様子だったし、初めてのキスもセックスも、全て一哉が主導で戸惑いや躊躇いなんて少しも見当たらなかった。

彼の過去の恋愛について聞いたことはないけれど、人並みの経験は積んでいるはず。

(まあ、親に恋愛関係の話なんてしないものね)

《そうだ。この前一哉が帰ってきたときね、岩倉神社に行ったみたいなのよ》

義母の言葉にドキリとした。

(この前帰った? 一哉さんが帰省したってこと?)
< 28 / 227 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop