エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
胸はズキズキと痛むけれど、これ以上頑張る気力が湧かない。

澄香は身支度をして、朝食をつくる代わりに荷造りを始めた。

昨夜決めた通り、しばらく家を離れるつもりだ。

長期滞在の準備をするとキャリーケースには収まらず、大きなボストンバッグまで引っ張り出すはめになった。

終わった頃にはクローゼットの中はすっきりしていて、もし彼がこの扉を開けたら妻が家出をしたと思いそうだ。

(実際、家出のようなものかもしれないけれど)

一度家を出た後は、夫婦関係が変わっていくはずだ。

澄夏から離婚を提案したら、彼は離婚に合意するだろう。

そのときを想像すると苦しさが襲って来る。

早くも後悔しそうな弱い心を振り切って、荷造りを続ける。

(自分で決めたんだから、迷うのもいい加減にしなくちゃ)

ふいにいつか一哉に話した言葉を思い出した。

『なにかを決めるときは覚悟と責任を持たないといけないそうです。たとえ失敗しても自分のせいです』

今の澄夏には身につまされる言葉だ。

(受け売りとはいえ一哉さんに偉そうに言ったんだから、私もちゃんと覚悟をしよう)
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