エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
彼が気遣うように言ってくれたけれど、澄夏は複雑な気持ちになった。

(でも一哉さんは、一度地元に帰ってるんでしょ? それも私には秘密にして)

そんな考えが浮かんだのだ。自覚している以上に隠されていることに傷ついているのかもしれない。

「急で悪いんだけど、明日出発したいと思ってる」

「そうか……分かった」

彼がどことなく落ち込んでいるように見えるのはきっと気のせいだ。

澄夏自身が落ち込んでいるからそんな風に感じるのだろう。

(私が居ない方が一哉さんだって楽なはず)

それに彼の義父も、これを機に離婚に進められると動きだすかもしれない。

「そろそろ寝ようか。一哉さんは明日も忙しいだろうし」

一哉は疲れているだろうし、話を終えようとした。

しかし彼は頷く代わりに腕を伸ばし、澄夏をぐいっと引き寄せた。

「えっ?」

彼の力に逆らえるはずもなく、澄夏は引っ張られるまま一哉の胸に飛び込んだ。そのままぎゅっと抱きしめられて腕の中に閉じ込められる。

「い、一哉さん?」

彼がこんな勢いに乗ったような行動をするのは珍しい。一体どうしたのだろうか。
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