エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
顔を上げようとしたけれど、ぴったりと胸に抱き寄せられている為叶わない。

「あ、あの……」

もぞもぞと動きなんとか顔を上げる。その途端に澄夏を見下ろしていた彼と目が会い、どきりとした。なにか訴えかけるような切ない眼差しだ。

「一哉さん? どうし……んっ」

なにか有ったのかと聞こうとしたものの、それより前にキスで言葉を塞がれた。

「んん……あっ……」

一哉と初めてキスをしたのは、お見合い後何度か会ったあとだ。

澄夏にとっては人生初めてのキス。そのことを一哉に伝えてはいないけれど、男慣れしていない澄夏の態度や反応から察したのか、さらりとした挨拶のようなキスだった。

それでも澄夏にとっては頭が沸騰するような刺激的な出来事で、多分顔は真っ赤になっていたはずだ。

その後正式に結婚が決まり会う回数が増えても、一哉はともて紳士的だった。

デートの別れ際のキスは爽やかで胸がときめくようなもの。

初夜は挙式の日の夜だった。そのとき初めて、息も出来ないような大人の口づけを彼に教えられた。頭が真っ白になる澄夏に触れる手はあくまで優しくて、決して無理強いはしなかった。
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