エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
澄夏に詳細は分からないが、相当立て込んだ状況なのだろう。緊迫した気配がこちらにまで伝わってくるようだ。

「悪いな、フォローして貰ってばかりで。着いたら交代するから休んでくれ」

一哉の声ががらりと変わった。ビジネス的なドライさが消え、代わりに相手を気遣う柔らかさを感じる声音。

《大丈夫。あとひと息だもの。でもそうね、落ち着いたら奢って貰おうかな》

真咲の声も変化した。どこか甘えるような、女の声だ。

一哉との濃厚な触れ合いで熱を持っていた心と体の温度が下がる。

澄夏が入り込めないふたりの絆を目(ま)の当たりにしたからだ。

「ああ、分かった。それは心配するな……後でな」

一哉の柔らかな声が続いている。いつの間にか一哉は澄夏と距離を取っていた為、真咲の返事は聞こえなくなった。

通話を終えた一哉はスマートフォンをスーツのポケットに仕舞ってから、澄夏に視線を向けた。

「すぐに出なくてはいけなくなった」

「問題が起きたの?」

内容が少し聞こえていたけれど、あえて聞いてみる。

「ああ」
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