エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
(なんでこんなことに……澄夏は気分を悪くしたよな)

彼女の正確な気持ちは分からないが、どちらにしても一哉が夫として信頼されていないのは間違いない。

彼女は母との会話について報告も相談もなかったのだから。

それに彼女の口からはっきりと聞いた訳ではないが、会いたくなさそうだった。

突き付けられた事実に心が沈む。

しかしいつまでも落ち込んでいる訳にはいかない。

明日顔を合わせたら彼女の気持ちを聞き出し、不安があるなら取り除くようにしなくては。

しっかりと伝えればきっと分ってくれるはずだ。

一哉は澄夏と形だけの夫婦になる気はない。昔も今もこれからも。

結婚すると決めたのは彼女がもたらす利益目的なんかじゃない。ただ愛している。


初めてあったあの日から、澄夏は一哉にとって特別な存在なのだから――。




◇◇

一哉は高校時代の多くの時間を陸上競技に捧げた。

我ながらストイックな日々だったと思う。

幸い努力が実り競技会で良い結果を残せたし、周りの人々も一哉に注目し期待をしてくれている。

自分が置かれた状況に満足していた。一哉にとって陸上は胸を張って誇れるものだったのだ。
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