エリート官僚は政略妻に淫らな純愛を隠せない~離婚予定でしたが、今日から夫婦をはじめます~
感心したし、あの岩倉代議士の娘と話してみたい気持ちはあったが、面識がないのにいきなり声をかけるのは躊躇われた。

ひとりで人の少ない神社の方に向かった。

彼女と違い一哉は正直やる気がなかったし、考えたいことがある。

居心地の良さそうな大きな木を見つけて、幹にもたれつつ考えに耽ける。最近はらしくなく悩んでばかりだ。

どれくらいの時間が経ったのか、人の気配が近づくのを感じた。

小枝を踏む音がした方に目をやると、澄夏がよろよろした足取りでこちらの方に歩いてくるところだった。

地面に落ちている殻を拾い集めるのは、意外と負担がかかる動作だから、体力に限界がきて休憩に来たのだろう。

澄夏はキョロキョロと周囲を見回し、一哉からほんの少し離れた大きな樹木の陰でしゃがみ込んだ。

「あー疲れた」

容易く声が届く距離だというのに、彼女はなぜか一哉に気付いていないようで、独り言にしては大きいちょっと間の抜けた声をあげた。

可愛い声だが、口調が見た目の令嬢風のイメージとあまりに違っていて面食らった。
< 88 / 227 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop