秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 ……だったら、そうしたらいい。だからもう、やめてくれ。
 俺は朦朧とした意識の中で、俺を苛む元凶に乞うていた。屈したくなどないのに、もう抵抗する気力が枯渇していた。
 ……そんなに欲しいのなら、くれてやる。……そうさ、俺が手にしているもので、自分から望んだものなどなにひとつない。
 民をより良く導くため、強くなりたいと思った。賢くなりたいと思った。そのための努力を惜しんだことはない。しかし、それらは本当に俺の意志だったのか。
 幼少期より徹底的に帝王学を身につけてきた。それによって培われた固定観念が、俺を衝き動かしただけではないのか。
 王位の座は、生まれた時から約束されていたにすぎない。己の命ですら、俺の意思で誕生したのではない。
 所詮俺は、代わりの利く傀儡。次代の王が、必ずしも俺である必要などどこにもないのだ。
 思い至れば、すべて虚しくなった。
 ……そんなに欲しいのなら、持っていくがいい。王位でも、俺の命でも。だからもう、俺を自由に──。
< 324 / 340 >

この作品をシェア

pagetop