秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 ……これはいったい、どういうことだ?
「アズフィール様」
 遠くから俺を呼ぶ声があった。
 ……誰だ? 俺の名を呼ぶのは?
「あなたが私を守ってくれたように、今度は私があなたを守るわ」
 ……君が、俺を?
「何人にも、傷つけさせない。あなたには、私がついている! だから……」
 ドクンと心臓が波打った。
「戻ってきて──!」
 あぁ、メイサだ! メイサが俺を呼んでいる──!
 俺はカッと目を見開き、周囲に残存する不快な朱色の呪縛を散り散りにして、メイサの声に向かって両手を伸ばした。
「メイサ──」
 開いた視界に、胸の前で固く両手を組み合わせ、俺を見下ろすメイサの姿が見えた。彼女の顔は、あふれる涙で濡れていた。
「アズフィール様、戻ってきたのね……! あ、これを取ったら、すぐにドクドール先生を呼んでくるわね」
 メイサは感極まったように叫び、ハッとした様子で俺の胸部から焦げたもぐさのついた鍼を取り去った。
「……メイサ? 泣いているのか?」
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