秘密の癒しチートがバレたら、女嫌い王太子の専属女官(※その実態はお妃候補)に任命されました!
 俺はスッと右手を伸ばし、指の腹で彼女の目もとを拭おうとした。ところが、俺が触れるより一瞬早く、彼女が両手でその手を掴みギュッと握り込んだ。
「だって、あなたがもう帰ってこないんじゃないかって……っ」
 拭い損ねたメイサの目尻から、新しく珠を結んだ大粒の涙がホロホロと頬を伝っていった。清らかなその滴をひとつとて無駄にするのが惜しく、俺はスッと半身を起こすと唇でそっと啄んだ。
 体を起こす時に少しクラリとしたけれど、舌先が彼女の涙に触れた瞬間は、それを凌駕する酩酊感が俺を襲った。蕩けるように甘美なそれを欲するがまま、俺は幾度か角度を変えながら舌先で拾った。
「心配させたな、メイサ。すまなかった」
「よかった。……本当によかった。おかえりなさい、アズフィール様!」
 嗚咽するメイサを左腕で抱きしめた。メイサは握っていた俺の右手を解くと、両腕を俺の首後ろに回して抱きついてきた。
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